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珍玩堂主人 マスタング編 前編 [マッチボックス]

以前、2人の男爵編で書きましたが、1968年に誕生したホットウィールの大躍進は、
北米市場に重きを置いていたマッチボックスに、大変な危機感を抱かせました。

ビンテージ・ミニカー」の記事によると60年代後半の総販売量の6割は北米向け。
69年には2800万ドルの売上を予想していましたが、HWの登場で前年比10%減でした。

(松平定知さん風に)今日の「その時」は70年の○月△日といたしました。
マッチボックスは何を捨てて、何を得ようとしたのでしょうか・・・そして、その決断の結末は。
IMG_5949.JPG
左=No.8-E。Ford Mustang Fastback。1966年発売。
右=No.8-G。Wildcat Dragster。70年発売。

レギュラーホイールのマスタング(No.8-E)の魅力は、グリルのモールドもさることながら、
側面のバーを前後に動かすことで、前輪が操舵できるギミック!

面白い機構なのですが、バーがプロポーションを崩すと考えたのか搭載はこのモデルのみ。
ミウラ(No.33-D。69年発売)などは、テクノ式のオート・ステア機構を採用しました。

HWの登場まで、世界の小スケール市場を寡占していた老舗のMBが、
マスタングやミウラの路線で作り続けていれば、玩車の歴史は今と違ったのかもしれません。

しかし、現実はそうではありませんでした。MBを製造販売するレズニー社の役員たちは、
「マッチボックスをホットウィールにする」という決断を下したのです。

マスタングは他と同様、ピアノ線の車軸に太いスーパーファストホイールを履かせられ、
幾多の子供たちが夢中になったステアリング機構も撤廃(No.8-F。70年発売)。

さらに同年内に再度の金型改修を受け、ボンネットにはむき出しのエンジンがせり出しました。
左右ドアのモールドは上から紙シールが張られて見えなくなっています(No.8-G)

白い野生馬(一部、赤なども存在)を、目にも鮮やかなオレンジの山猫に変えてしまった・・・
後編ではマッチボックスにルビコンを渡らせた、「世界一速いミニカー」が登場します。

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aavecj

たとえばMODSやROCKERS・・・紳士な英国に嫌気がさした若者が、アメリカ製のGパンを履き、アメリカ製のライダースを着てアメリカにかぶれる。

たとえば速度記録・・・英国が力を注いでいた速度記録に、ホットロッディングの要素をとり入れる。

要は脱皮したかったのではないでしょうかね~。
オリジナル路線も必要ですが、売れなければならない=消費者の興味を考えた結果、やっぱりアメリカンスタイルは必須だったのでは?
by aavecj (2006-11-19 00:07) 

ねこざかな

う~ん。確かに消費者の興味はメーカーとして至上の課題なのですが・・・当時の消費者の大多数を占めていた少年たちにとっても、マッチボックスのスーパーファスト化は歓迎された変化だったのでしょうか。

実は私、67年式のトミカ世代なので、70年前後の少年の視点を共有していないのですよ。メーカーが自信を持って世に送り出した商品が、思ったほど消費者に歓迎されないという事例はざらにありますし。

当時少年だった皆さんの思い出を拝聴したいものです。また北米でもスーパーファスト化で売上が改善したのかどうか、引き続き調べてみようと思います。
by ねこざかな (2006-11-19 02:24) 

1275GT

自分の少年時代を振り返ってみると・・・
ミニカーを取ってみても、出来るだけ精密に、さらに可動する部分も多くと。
残念なことに作る技術が伴わないので、プロポーションが変だったり、
すぐ壊れたりしましたが・・・
走らせて遊ぶと(笑)、すぐ部品やタイヤは取れ、塗装は剥げ・・・
でも、皮肉にも質の悪い肉厚の材料だったせいで、カタチは残ってますが。

やがて、豊かな時代になりクルマはより身近な存在になって、
もうミニカーを手で押して遊ぶ子供達はいなくなりました。
プラモはモーターライズされ、スロットレーシングの時代になり、
ミニカーも走ることを要求されたのでしょう。
少なくても作り手はそう思ったはずです。
もうオトナになって、コレクターだった自分の目から見ても、
ミニカーを速く走らせると言うのは、遊びとしても説得力に欠けてました。

今や駄玩にさえフルデティールが要求される時代です。
もうコースに沿って空中で1回転する!ミニカーは見られませんが(笑)
こうしてコレクターのもとで生き残っています。
恐らく今のミニカーは数十年後にはカタチさえ残らないかも・・・
’60年代(’50年代か!)の少年はそう思います。
by 1275GT (2006-11-19 10:10) 

グラス

MBのムスタングは当時も今もお気に入りの1台です。
子どもながらに良くできていると、思ったものです。
まさにカッコイイそのものでした。
あのステアリング・アクションはムスタングだけだったけど
あのころは、MBの様々なギミックに感激してました。
やっぱり、50-60年代のMBは最高ですね。
by グラス (2006-11-19 22:36) 

ねこざかな

>> 1275GT様
まだホットウィールが日本に正規輸入されていなかった98年ごろ、台北のトイザらスで初めてHWのコースセットを見かけて、その奔放なデザインと種類の多さに驚いた記憶があります。火山や龍みたいなデザインもあったな。。。

近年発売された「ゴリラアタック」なんてコースは凄いですよ。アマゾンの説明を引用すると「暴れるゴリラの攻撃をかいくぐってミニカーを走らせ、ミサイルを発射させてゴリラを倒して遊ぶ。ゴリラがコースを叩いてミニカーを檻の中に閉じこめたり、ミニカーをつかんで口の中に放り込んだりする」・・・楽しいのか、それ。

ともあれ、このようなコースが登場し続けているということは、日本国内はいざ知らず、米国の子供たちはいまでもHWを爆走させて遊んでいるのでしょうね。同じ電池を使うコースでも、トミカとはだいぶ趣が違うのが興味深い。

今のミニカー、コナミや京商、田宮あたりのモデルを射出したら、一発でなにかしら部品がもげてしまうでしょうね。コースによってはミニカー同士をクラッシュさせて楽しむものもあるのですから・・・ほんとカタチも残らないかも(苦笑)
by ねこざかな (2006-11-20 03:18) 

ねこざかな

>> グラス様
私のマッチボックスのコレクションは今世紀に入ってから、ぽつりぽつりと集めてきたものですが、ムスタングはかなり欲しいと思って探索。最初の個体を入手して、ギミックを動かしたときは童心に戻っていました。

窓すらない50年代のモデルも素晴らしいけど、ギミックにはまた違った魅力がありますね。その点ではローラーマチックを搭載した70年台のスーパーファストにも、お気に入りのモデルがあったりします・・・欲が深い?
by ねこざかな (2006-11-20 03:33) 

むすたんぐ

MBがホットウイ-ルに移行した頃、小学生だった私は失望してました。庶民の子供にとってMBは少ない小使いを貯めてやっと入手する「宝物」でした。でも当時金持ちの子供にとっては親が好きなだけ買ってくれる単なる「おもちゃ」だったのです。「宝物」は地味なカラ-で早く走らなくても手のひらで輝いてくれましたが、「おもちゃ」は派手なカラ-でホットウイ-ルでなければならなかったのです。当時子供ながらにホットウイ-ルで遊ぶ金持ちの子供を「こいつら、わかってないな!」って思ってました。豊かなアメリカの子供と日本の成金の子供たちがMBをホットウイ-ルに移行させたのだと思います。私はずっと今でも、MBは「宝物」のままです。ムスタング、当時の子供たちにとって「カッコイイ車」の代名詞でした。「マスタング」ではなく「ムスタング」という表記が78年まで正式な輸入車としての表記でした。 「ムスタング」編 楽しく拝見しました。有難うございます。
by むすたんぐ (2006-11-20 14:16) 

ねこざかな

庶民の子供とお金持ちの子供、それぞれの眼に映るミニカーのありように関するご高察、大変興味深く読ませていただきました。なるほど確かに、数点を大事にしている子にとっての「宝物」も、数多く持てる子にとっては走らせたり、ぶつけたりして遊ぶ「おもちゃ」に過ぎないのかもしれませんね。

中学校のころ、当時はとても高額な玩具だったラジコンカーを、国道を行きかう自動車の下をくぐらせて遊ぶお金持ちの子たちがいました(往々にして踏まれちゃうわけですが)。彼らの部屋には発売間もない「アップル」が・・・もはや世界が違いすぎて、欲しがる気持ちも湧きませんでした(苦笑)

MUSTANGは、私にとっても「ムスタング」のままです。子供の頃に覚えた呼び方は、もはや変えようがありませんね(笑)
by ねこざかな (2006-11-21 01:07) 

いっぷく

ミニチュアカーとメッカーノなどのトイ・オークションの下見には熱心なご老人が子供のように査定していました。
もちろん、売り物が一昔も二昔も前のもので、自分の子供時代には買えなかったものを今あさっているようにも見えました。
しかし、その熱心な鑑定作業を見ていてコンディションはどうかと声をかけたら、それはもう話が止まらないほど。
老いても少年のような目でもって趣味の世界に生きる人もステキだと感じました。
by いっぷく (2006-11-21 03:17) 

ねこざかな

いっぷく様の「クリスティーズ」のオークションについての話題、大変興味深く読ませていただきました。高齢であっても情熱をもって趣味を楽しむ・・・私もそんなコレクターになれたらいいな。同好の方と口プロレスを交わすことで精神的活力を得たり・・・と、ゆーわけで皆さん、予防介護のためにもミニカーを集めましょう(笑)
by ねこざかな (2006-11-21 13:22) 

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